そもそも

「心中天使」の基となったシナリオは、2003年に知り合いの音楽家のために書いたものです。

自作の音楽をモチーフにした映像作品を作りたいというその音楽家が、私に声をかけたのがきっかけでした。
結果として、私は途中でその企画から外れたのですが、そのとき書いたシナリオをプロデューサーに見せたことが「心中天使」の始まりです。

もちろんその後の度重なる改稿で、最初のシナリオと「心中天使」のシナリオは別のモノになっています。
しかし、ストーリーやドラマよりイメージが先行しているという特徴は、ほとんど分裂的であった最初のシナリオほどではないにしろ、「心中天使」のシナリオにも色濃く残っています。

もうひとつ、当初から変わっていない点は、「心中」というモチーフです。
この「心中」はお分かりの通り、ダブルミーニングです。

もともと件の音楽家は即興演奏で作品を作る方で、私はそこに無意識的なロマンチシズムを感じていました。
と同時に、近松の心中ものや任侠映画における「道行き」のイメージを連想していました。

若いとき、増村保造監督の「曽根崎心中」を見て、その心中シーンに衝撃を受けたことがあります。
ある意味「その逆」をやろうとしているのが「心中天使」のシナリオです。