東京物語

シナリオの続きを考えています。

お話をドラマティックにするには、まず「いいやつ」と「わるいやつ」をはっきり分けなければならないと思うのですが、お話に「本当らしさ」を与えるには、同時にその分類が相対的なものにすぎないことを示さなければなりません。

野田高梧小津安二郎のシナリオ「東京物語」がすごいと思うのは、老父母、長男長女、義理の娘紀子、どの立場に肩入れするかによって、印象がまるで違うところです。老父母中心に読むと(もちろんそれが普通ですが)、かなりドラマティックというか泣かせる物語であるわけですが、息子娘に肩入れして読むと(自分が中年になってから特にそういう読み方をしてしまうのですが)、むしろ身につまされる「リアルな」物語という印象になります。紀子に注目すると、そのステレオタイプないい人ぶりを自らひっくり返すラストの台詞など、なにか「リアル」すぎて、怖いとしか言いようのない気分になります。

と、自分を鼓舞するための覚え書きでした(笑)。