インセプション

シネコンで鑑賞。ネタバレあり。


退屈だが、かなりいい。かなりいいのだが、致命的な欠陥がある。


とにかく前半が退屈。
メインストーリーは、主人公が仲間と共にターゲットの夢に侵入して、あるミッションの遂行を目論む、というものだが、そのメインストーリーが始まるまでにかなりの尺が消費される。そうなってしまった最大の原因は、おそらく、この映画で描かれる夢の世界のルールが観念的すぎるからだろう。観念的で分かりにくいから、かなりの時間をかけて説明するのだろうが、「観念」は説明すればするほど退屈になってしまう。


メインストーリーが進行し始めてからは、かなりいい。
「夢」「夢の中の夢」「夢の中の夢の中の夢」という3段重ねの夢が、部分的に関連し合いながら同時進行するというアイディアは、新しいとは言えないのかもしれないが、面白かった。


この映画の致命的な欠陥は、夢への侵入に「中途半端な機械」を使ったことだ。
夢への侵入に使う(妙にアナログな感じの)機械の使い方や仕組みは、映画の中では一切説明されない。「マトリックス」などのSF映画が「科学的」な理屈に基づいているのとは対照的だ。そのせいでこの映画は、なんというか、まあ「アート的」とでもいうような体裁をまとうワケだが、しかし、その「アート的」な部分で描いている主人公と妻のドラマが、私にはどうも陳腐に見えてしまった。
そもそも「インセプション」の物語は、「ガタカ」や「12モンキーズ」(「ラ・ジュテ」)や「エターナル・サンシャイン」のような「アート系SF映画」(私の勝手な分類だが)にはなり得ない。だったら、もっとちゃんとした機械=「科学的」な機械か、超能力や魔術その他「最低限の説明がつく仕掛け」を用いて、B級SF映画の体裁を取った方がより面白くなったのではないか、というのが私の意見だ。