ボッコサセ、ツヅレサセ

コオロギが鳴いている。「ボッコサセ、ツヅレサセ」
私の祖母は、コオロギはそう鳴いているのだと教えてくれた。「着物を繕って冬に備えなさい」という意味だという。

●つづれ【×綴れ】
1 破れをつぎ合わせた衣服。ぼろの着物。ぼろ。つづれごろも。「—をまとう」
●つづれさせ‐こおろぎ〔‐こほろぎ〕【×綴刺蟋=蟀】
コオロギ科の昆虫。普通にみられるコオロギで、体長約2センチ、黒褐色。頭部は丸みがある。雄は8月中旬から11月ごろまでリッリッリッと鳴く。名は、これを古人が「肩刺せ裾(すそ)刺せ綴れ刺せ」と着物の手入れを促していると聞きなしたというのによる。
YAHOO!辞書(大辞泉)】

ググってみたが、「ボッコサセ、ツヅレサセ」ではヒットしなかった。おそらく「ボッコ」も「ツヅレ」と同じような意味だろう。


「雨のしとしと降る晩は、マメゾが徳利さげて酒買いに」
祖母はよく、そんなフレーズを、節をつけて繰り返していた。

●まめぞう〔まめザウ〕【豆蔵】
1 江戸時代、手品・曲芸やこっけいな物まねなどをして銭を乞うた大道芸人
2 軽薄なおしゃべりをする人をののしっていう語。
3 非常にからだの小さい男をいう語。
YAHOO!辞書(大辞泉)】

広辞苑によると、豆蔵は「江戸では代々浅草で、笊・扇・徳利の曲芸をした」とあるから、「マメゾ」は「豆蔵」で間違いないだろう。20年前、ラジオドラマにこのフレーズを引用したら、演出したデイレクターが「少し調べたけど、京都方面のわらべうたらしいよ」と教えてくれた。真偽のほどは分からない。


「どこへいくの、売られていくの」
これもまた、明治生まれの祖母が繰り返し唄っていたものだ。この前後に歌詞があるのかどうか、祖母がそれを知っていたのかどうかは分からない。ただ意味もなく、繰り返し口ずさんでいた記憶がある。