クラブ活動

中学のときは理科クラブだった。
熱心な女の先生がいて、水生昆虫と化石花粉の研究をやっていた。
私は化石花粉の研究を選び、土壌から花粉を抽出する方法や、ブレパラートの作り方や、顕微鏡で花粉の種類を見分ける方法などを、先生や先輩から習った。
私が三年生になると、女の先生は転勤し、代わりに若い男の先生がやってきた。
私は化石花粉の研究をやめ、線香花火作りを始めた。先生にテーマを与えられたのではなく、自分で決めたのだったと思う。
解説書を見ながら、硝石と硫黄と鉄粉を調合し、こよりに詰めた。火をつけると、それはささやかな火花を出した。


高校は器械体操部に入った。
中学が同じだった友達に誘われたからだ。
家に帰って話すと、父親が驚いた。私は運動が得意ではなかった。
先輩は四人、新入生は私と友達の二人だけだった。顧問の先生も先輩もユルい人たちで、楽しかった。
しばらくすると、いつも隣りで練習している卓球部からひとり転部してきた。そいつも運動が得意ではなかったが、何もできない私が練習している姿を見て、あれなら自分にもできそうだと思ったという。
意外に早く、バック転や宙返りができるようになった。逆立ちも、長く静止したり、歩き回ったりできるようになった。
三年生の春頃まで続けたが、結局、鞍馬、平行棒、鉄棒、跳馬はほとんどできるようにはならず、吊り輪はぶら下がるのがやっとだった。


大学に入ると、地獄の細道と呼ばれるサークル勧誘のイベントがあった。入学手続きを終えた新入生を、各サークルの勧誘員が待ち構えるのだ。
私は「SF研究会」に捕まった。いや自分で立ち止まったのかもしれない。マニアというワケではなかったが、中高を通じてハヤカワSF文庫を何冊か読んでいたから。かなり熱心な勧誘を受けたが、その先輩の口角に白い唾が溜まっているのを見て、入部するのはやめた。
後日、英語の授業を受けながら、私は改めてどのサークルに入るか思案した。集団でヘンな踊りをするサークルがあったが、そこに入ってみようかと本気で考えた。なんとなく「自分から遠いところ」がいいと思っていた。
いろいろ考えた末、「映画研究会」の部室へ行ってみた。映画はそれほど見ていなかったが、嫌いではなかった。
聞くと「映画研究会」は8ミリで映画を撮るサークルだという。いきなり部室を暗くして8ミリ映画を見せられた。暗い中画面の中で、男女がシンナーを吸っていた。その映画が面白いのかどうかは分からなかったが、サークルは面白そうだと思った。私は「映画研究会」に入ることにした。