地下鉄のヘンな女子

真向かいに座った若い女性が、左右まったく別の靴を履いていた。右はローファーというのかパンプスというのか、お出かけ用の白い靴なのに、左はクロックスっぽい合成樹脂の茶色いサンダルだった。見た限りごくごくフツーの女性で、態度にも不審なところはなかったので、左足にケガをしていて仕方なくサンダルを履いているのだろうかと、私はぼんやり考えた。よく考えると、それなら両足ともサンダルを履けばいいわけなのだが、多少酔っぱらっていたのと、形も色もまったく違う二種類の靴を間違えて履くはずがないという先入観とで、私はそれ以上彼女について考えるのをやめてしまった。他事を考えているうちに彼女は電車を降りていった。すると隣に座っていた連れ合いが教えてくれた。彼女、カバンの中の荷物を取ろうとした拍子に足元を見て、恥ずかしそうに笑ったよ、慌てて降りていったのは、靴を間違えた場所に戻るためじゃないかな、と。私とは違って連れ合いはこの「ヘンな女の子」を最後まで観察していたのだ。しかし、かなりおかしな光景を「まあなんか理由があるんだろう」とスルーした私も私だが、どう見てもシラフなのにあり得ない間違いをする彼女も彼女だ。なにやってんだよ!(笑)