どっこい、どっこい

「どっこい大作」というテレビドラマがあった。1973年1月から74年3月にかけて放送されていたようだから、私が小学1年から2年のときだ。多くても数回しか見ていないと思うのだが、大人になってからよく思い出す。

一番印象に残っているのが主題歌のサビだ。「一度限りの人生を、オレの力で切り拓く」という歌詞を、演歌調に歌い上げる。今聞くと何ということのない歌詞だが、当時の私は、この「切り拓く」という言葉に、本来とは違う特別な意味を感じていた。というのも、このドラマ、最初一流のラーメン屋になろうと奮闘していた主人公が、あっさり?パン屋に転職するからだ(wikipedia:どっこい大作によると、その間に清掃会社篇があるらしいが)。「一粒で二度おいしい」という昔のグリコのキャッチフレーズではないが、主題歌の「一度限りの人生を切り拓く」というのは「人生を二度生きる」というような意味だと、幼い私は考えたワケだ。

実際どんなドラマだったか、詳しいことは一切覚えていない。ただ私には、主人公が仕事を変える、ということだけが衝撃だった。転職する主人公など、他では見たことがなかった。彼は情熱的だからこそ、転職するのである。一度限りの人生を、より豊かに生きるために…。当時の私は、そんなふうに理解した。それが主題歌のサビとセットになって、強く私の脳裏に焼き付いた。

以来、日々の生活で行き詰まると、「どっこい大作」のテーマ曲が頭の中に響くのである。やめること、かえること、やりなおすこと…少々オーバーな言い方だが、そういう行為に対する憧れのシンボルとして。