ブラック・スワン

ネタバレあり
最初から最後まで、ノレそうでノレない、欲求不満の残る映画だった。
いちばんがっかりしたのは、主人公が楽屋で「代役」の女を殺すシーン。最後の最後になって、やっとオモシロくなって来たぞと思ったのもつかの間、すぐにそれも主人公の「妄想」だったことが明かされる。
結局、この映画で起こる異様なことはすべて主人公の「妄想」なのだ。「ヘンなことが起こる」→「でもそれは妄想でした」の繰り返し。個人的にいちばん苦手なパターンだ。
だってそれは、本当に起こってはいないんでしょう? そう考えた途端、私はどんな衝撃的な映像にも興味が持てなくなる。問題にしているのは、映画内で「本当に」起こっているかいないかということだ。そういう意味でいえば、「ブラック・スワン」という映画のなかで、事件らしい事件はなにひとつ起こっていない。
ワザとだろうが、演出家や母親のキャラクター、主人公のセックス恐怖も紋切り型すぎて引いた。一緒に見たマンガ好きの連れ合いは「スポ根やん」の一言で片付けていたが…。
連れ合いと意見が一致したのは、主人公に稽古をつける高齢のバレリーナが怖かったということ。たるんだ皮膚の下のものすごい筋肉が人間離れして見えた。