大阪の女

柳ヶ瀬のロイヤル劇場で鑑賞。
不思議なラストが印象に残った。


主人公は大阪の「芸人村」に住む、明るくお人好しな若い後家お千(京マチ子)。
元漫才師の父親(中村鴈治郎)や芸人たちのせいで、お千は次から次へとトラブルに巻き込まれる。
けれども彼女のイノセントな振る舞いが、すべてを丸く収めてしまう。


スピーディーな展開で飽きさせないが、ラストシーンだけが妙に間延びしているように感じた。


寄席の舞台と、一人チンドン屋で客寄せするお千が、何度もカットバックされる。
若き日の「かしまし娘」がこのシーンにだけ出ている故の演出でもあるだろうし、
お千と初恋の芸人(高松英郎)の未来を暗示する意味もあるのだろうが、それにしても何だかしつこい。


そのせいで、人混みでひとり看板を背負い一心不乱にクラリネットを吹くお千の姿が、だんだん異様に見えてくる。
テンポのいいコメディがゲシュタルト崩壊して、リアリティを失った「無垢な」キャラクターだけが残される。


お千を演じているのが京マチ子だったことも、大いに関係していたのかもしれない。