遠い場所

実家近くの海岸を散歩した。
堤防を南に歩くと、すぐに狭い河口に突き当たる。
通称「南の川」。本当の名前は未だに知らない。
その川を越えると、となりの街に出る。いわゆる「学区外」だ。
子供時代の名残で、いつも散歩はそこで折り返す。
でも今回はなんとなく、少し先の小さな漁港まで足を伸ばした。
案の定、ずいぶん遠くまで来た気がした。
古い祠があるのも、汚らしい猫がたむろしているのも、いちいち新鮮に感じられる。
港の隣には、広い砂浜が広がっている。
ウチの近くにも、40年前には、三角ベースができるくらいの砂浜があった。
近くは遠く、遠くは近い。
カメラを持ってこなかったことを後悔した。
しかし、こういう感覚が、カメラに写るとも思えなかった。