トンデモその1
あるミュージシャンが、日本人は裏拍が苦手といっていた。
それを聞いて、なぜか小津の映画を思い出した。
小津の会話シーンはカットバックが多い。
カットバックは普通アクション―リアクションでつなぐ。
会話なら、言われたことに対する応答がまた相手の応答を呼ぶという具合。
リアクションが連鎖していくイメージ。
でも小津の会話はそういう感じがしない。
相づちが多いからかもしれないが、誰もがいいっ放しな感じ。
リアクションがない。
だからリアクションの連鎖になれた目には異様に見える。
でもわれわれの実際の会話は、未だに小津映画の会話に近いと思う。
われわれの目と、実際の生活には乖離がある。
冒頭のミュージシャンがいったのは、裏拍にのるのが苦手というニュアンスだった。
巷にはそういう音楽が溢れているわけだから、やはりそこにも乖離があるのだろう。