ガールフレンド・エクスペリエンス

名古屋シネマテークにて鑑賞。

食事と会話ばかりの映画。しかし面白い。退屈しない。難解でもない。

主人公チェルシーの仕事は「エスコート」、すなわちセックスと、それに付随する食事と会話、ときにはショッピング。会話の内容は仕事と政治。1時間に2000ドル支払う彼女の「クライアント」は成功者ばかりである。

チェルシーは恋人と同居している。彼はチェルシーを愛し、彼女の仕事を理解している。彼女自身もまた仕事に誇りを持ち、さらなるビジネスの拡大に余念がない。

この映画が描くのはモラルでも愛でもない。現在の、ニューヨークの、成功者たちの、リアルな生活である。劇的要素とドキュメンタリーの冗長さ、そのいずれも回避しつつ「生活」を描ききるスティーブン・ソダーバーグの手腕は見事だ。77分という尺や、チェルシー役に人気ポルの女優サーシャ・グレイを配したところなどは、「インディーズ作家」としての面目躍如といえるだろう。

昔有名な映画評論家がソダーバーグを「この人は伸びない」と評した。私も「KAFKA/迷宮の悪夢」(91)を見たときはかなり首を傾げたが、結果的にはメジャーで大成功した。その上インディーズ魂も失っていないところを見せつけられると、好き嫌いはともかく、恐れ入りますと言う他ない。

ソダーバーグのもう一本「Bubble/バブル」は上映期間が短く見逃してしまった。悔しい。