今日の出来事

両手に仕事用の機材を持って地下鉄の階段を下りていくと、腰の曲がったおばあさんが手押し車を難儀そうに一段一段下ろしている。大変そうだなあ、というより、お達者だなあ、と思いながら追い越してしばらくすると、後ろから若い女性の声がする。どうやら、大丈夫ですか、持ちましょうか、というようなことを言っているらしい。おばあさんの言葉は聞き取れなかったが、声の主と思しき女性が私を追い抜いて改札に入っていったところを見ると、おばあさんは女性の親切を断ったらしい。プラットホームで再びその女性の姿を見かけたが、年格好は二十歳前後、雰囲気は学生かOL、背は小さいが活発そうな、なかなかの美人だった。

さて、仕事を終えて帰宅し、近所のスーパーへ行くと、偶然にもその女性がいた。ショッピングカートに二三歳のかわいらしい女の子を乗せていた。まさかお母さんだったとは考えてもみなかった。数時間前、地下鉄のホームでは彼女をじろじろ観察していたくせに、私はなんだか彼女がまぶしくなって、すぐにその場から離れてしまった。