音楽と匂い

仕事が終わってから、大学時代の先輩が定期的にやっている80年代音楽のクラブイベントに顔を出す。音楽好きでもクラブ好きでもないのだが、その先輩たちが好きなので、顔を見にというか挨拶しに行った。暗いカウンターでビールを飲みながらぼんやりしていると、この二十数年が完全に消え去り、自分がまだ二十代であるような錯覚に襲われる。音楽はそうやって人の心を直接操作する所があるから嫌いだ。音楽は匂いに似ている。匂いも脳の深い所を直接揺さぶる。しかし…。若い頃、大島渚監督の映画で若者がフォークソングやインターナショナルを歌うのを見て、「時代を感じるなあ」などど思っていたが、80年代ニューウェイヴが鳴り響くタバコ臭いクラブの片隅で、はるかノスタルジィに浸っているオレにも「時代を感じるなあ」だ。