無縁社会などやってこない

無縁社会」という実体のない言葉がマスコミで流行しているようです。
無縁社会の地獄

二〇〇五年の国勢調査によると、男性の生涯未婚率は15・96%だという。つまり、男性の七人に一人以上が一生独身を貫くというのである。女性は7・25%だから男性の半分くらいか。
 余計なお世話かもしれないが、こういう人たちの老後の面倒はだれがみるのだろう。亡くなれば、無縁仏となるのだろうか。

私に関して言えば、余計なお世話です。

いったい、この国で何が起きているのか。地域のコミュニティーが崩壊し、人間関係が希薄化した。いわゆる無縁社会が出現したといってもいい。

地域コミュニティーの崩壊、人間関係の希薄化なんて、小説や映画でイヤという程テーマにされてきたことでしょう。今に限ったことではないということです。いきなり出現したのは「無縁社会」という「流行語」です。

だけど、どんなに世の中が変わっても、変わらないこと、変えてはいけないことがある。例えば、社会全体のお年寄りに対する敬愛と親の子どもに対する情愛である。
 もう二度と、無縁社会の地獄は見たくない。

「どんなに世の中が変わっても、変わらないこと」なら、放っておけばいいような気が…。ツッコミはさておき、もちろん、老人に対する敬愛、子どもに対する情愛は大切です。それらは教育の結果身に付くものでもありますから、社会全体として継続した啓蒙が必要でしょう。しかし、そこから一気に「無縁社会の地獄は見たくない」という結びに持っていくと、「日本の社会どんだけ荒廃しとんねん!」という印象だけが残ります。印象には印象で反論しますが、個別の事件は措くとして、現在の日本社会は過去と比べ、全体としては老人子供に愛のある社会だと思います。まだまだ愛は足りないとは思いますが、「無縁社会の地獄は見たくない」などという言葉でそれが改善されるとは思えません。むしろ「無縁社会」「地獄」という言葉がまき散らす「不安」が、人々、特に若い世代を萎縮させ、彼らから他者や社会への関心を奪うのではないでしょうか。