カメラとビデオカメラ、または写真と映像

長く「別の機材」であったカメラとビデオカメラが、いよいよ「同じ機材」になろうとしている。
今やデジカメで動画を撮影したり、ビデオカメラで写真を撮ったりするのは当たり前のことだ。
CMや低予算映画、そして自主映画でも、デジタル一眼レフカメラの動画撮影機能を使って撮影しているものがかなりある。デジタル一眼レフカメラは一般のビデオカメラよりイメージセンサが大きく、映画館で見る映画のような絵、つまり背景をぼかした画面が作りやすいからだ。
仕事柄、業務用ビデオカメラの新製品を常にチェックしているが、ビデオカメラの方も当然デジタル一眼の動画撮影機能を意識していて、レンズ交換ができてイメージセンサの大きいものが次々に登場している。
一部のプロフェッショナルな現場では、スチルカメラとムービーカメラはこれから先も「同じ機材」にはならないだろう。しかし、それ以外の現場で、カメラとビデオカメラが「同じ機材」になる日は、そう遠くない気がする。
映画はもともと写真から生まれたわけで、アナログ時代からベースとなる技術は同じだった。アナログテレビ(ビデオ)の時代に映像は写真から少し離れ、デジタル時代になって急速に再接近した。
それにしても、いつも不思議に思うのは、これほど技術的には近い写真と映像が、表現としては全然違うものであることだ。いや、この断言にあまり自信はない。これはかなり主観的な判断だ。
私はこれまで、写真やカメラに強く惹かれたことがない。大学時代、あれほど映画と8ミリのムービーカメラにはハマったのに、である。小学生の時にお年玉で、当時流行っていたポケットカメラを買って以降、写真を撮るためのカメラは所有したことがない。
写真に写っているのは常に死んだものだ、映画に写っているものは映写機に掛けられ上映されるたびに生き返る、そんなようなことを誰かが書いていたような気がする。私には、映画や映像と写真は、表現としてまったく違うものに感じられる。
実は今、デジタル一眼レフカメラの安い入門機を買おうかと思っていて、数日前から「価格コム」ばかり見ている。もちろん動画撮影機能が目当てなのだが、せっかくだから写真も撮ってみたい。それで今までの写真に対する考え方も変わるかもしれない。